糖尿病にはさまざまな合併症があります。 時々検査を行い軽い内に発見し、必要があれば、それぞれの合併症にあった治療をおこないます。 しかし、治療の基本はあくまでも血糖コントロールを良好に保つことです。
血糖コントロールが悪いと、網膜の毛細血管が閉塞したり出血したりして少しずつ目が見え難くなり、ひどくなると失明します。 早期発見のためには眼底検査を行い、必要なら血管を強くする薬をのんだり、専門の眼科で光凝固療法といって、レーザー光線で網膜を治療します。
始めは、尿にアルブミンや蛋白がおりるだけで症状はありません。 しかし、しだいに体に浮きがでてくるようになり、また胸に胸水がたまるようになり、利尿剤が必要になります。 また、血圧が上がらないように薬をのみ、食事は低蛋白食となります。 もっと進行すると、最終的には尿毒症となり尿がでなくなります。 この時は週3回程度“透析”をしなければなりません。
最も多い症状は、両足の裏のしびれ感です。 はだしなのに、まるで靴下をはいているように足の裏の感覚が鈍くなってきます。 ひどくなって来ますと、足の痛覚や温度覚もなくなってしまいます。 自律神経系も障害されますと、胃腸の動きが悪く、便秘になったり、排尿障害がみられたりします。 早期発見のために神経伝導速度の測定などが行われます。 治療のためには、アルドース還元酵素阻害薬(キネダック)が飲まれたりします。
三大合併症の他、糖尿病で見落としてならないのは、“動脈硬化”と呼ばれるものです。
これは、血液を送る動脈が年と共に少しづつ硬くなり、また血管の内壁に血糊状のものがこびりついて、血管がだんだん細くなります。 完全に足の血管がつまれば、糖尿病壊疽(えそ)となり足が腐ってきます。(写真下)また心臓の血管がつまれば、心筋梗塞、頭の血管がつまれば脳梗塞となります。
血管は50%程度つまっても全く無症状ですが、95%程度つまると始めて症状がでてきます。 足では、間歇性跛行といって、歩くと足が痛くなることを繰り返します。 心臓では、坂道や階段で胸が締め付けるようになり狭心症となりますし、頭では、一過性の片麻痺やふらつきが起きます。 これらの治療のためには、血液を固まらないようにする薬や、血管を拡張する薬を内服します。 また、細くなった動脈をカテーテルの先につけた小さな風船で押し広げて太くする風船療法という方法や、外科的にバイパス手術を行うこともあります。 糖尿病は、このような動脈硬化を悪化させる最も重要な原因のひとつです。
ほかにも、高血圧・高脂血症・肥満・喫煙などのリスクファクターとよばれるものが重なって、動脈硬化を悪化させます。 すこしでもこれらの原因をよくするようにひとつひとつ治療して行きましょう。