肥満は、体に脂肪組織がたくさん蓄積される状態で、水分が貯って体重が増加すること(浮腫)とは区別されなければなりません。 従って厳密には体脂肪量を測る必要がありますが、一般的には肥満の判定は身長に対する体重の比率、肥満指数をもって表わしています。
体脂肪量を表わす一番よい目安はBMI ( Body Mass Index ) と呼ばれる値で、これは国際的に通用する目安です。 BMI=体重(kg)/(身長m×身長m)の式で求めることができます(身長はメートルで計算)。 日本人の理想体重は、BMI からみると22.2であるとされています。 したがって身長が分ればそのヒトの標準体重を算出することができます。 例えば、身長160cmのヒトの標準体重は、1.6×1.6×22=56.3㎏と算出できます。 もう一つ肥満の程度を表わす目安としては、肥満度(%)が使われます。 肥満度はそのヒトが標準体重に比較して何%多いかを表わす数値です。 +10%から+20%までならば過体重,20%以上を肥満としています。 20%以上はBMI 26.2に相当します(肥満学会ではBMI 25以上を肥満と定めています)。
肥満は、動脈硬化性疾患の危険因子の一つとして重要であり、実際肥満のヒトはしばしば糖尿病、高血圧、高脂血症(特に高トリグリセリド血症)とともに冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)を伴うばかりでなく、脂肪肝をはじめ胆石、膵炎、大腸がん、胆のうがん、不妊、子宮がん、卵巣がんのほか、関節症を合併することが多いことが知られています。
肥満は、過剰の脂肪が体に蓄積する状態です。 脂肪のつき方が腹部を中心に多い“上半身肥満”と、腹部から下半身に脂肪沈着が多い“下半身肥満”に分けられます。 上半身肥満は、どこに脂肪が多くついているかを目安に“皮下脂肪型肥満”と、内臓器官の周囲に脂肪沈着が著しい“内臓脂肪型肥満”に分けられ、後者の方が糖尿病,冠動脈疾患の合併が高いといわれています。 皮下脂肪型(S)か、内臓脂肪型(V)かの見分けは臍の高さで CT をとり、2つの脂肪組織の占める割合を面積比(V/S)で計算し求めることができます。 V/S比が0.4以上を示す場合を内臓脂肪型肥満と判定しています。 胴、腰の部分に脂肪がつき手足はむしろ細く(中心性肥満,水牛型肥満)、筋肉の力が弱く顔がまるくなる(満月様顔貌)などの特長を示し、血圧の高いヒトは、脳下垂体あるいは副腎ホルモンの増加によって起こるクッシング病ないしクッシング症候群と呼ばれる疾患が疑われます。 ときには単なる肥満(単純性肥満)と誤診されている場合があるので、中心性肥満、円い顔、皮膚線条(腹部に幅の広いピンク色の線が入る)をもつ高血圧では、副腎ホルモンの検査が絶対必要です。 まれには糖尿病,骨折がこの疾患を診断するきっかけになることがあります。