生活習慣病とは学術的な用語ではなく、これまで成人病の名で呼ばれていた多くの疾患がこれに該当します。 ヒトが病にかかる原因には、生来、祖先からうけ継いだ遺伝素因と生まれた後どんな環境の中で、どのような生活習慣のもとに暮らしてきたかが大きな関わりをもつと考えられています。環境については病原微生物やヒトに有害な物質(ホルモン撹乱物質を含め)に汚染されているかどうかが問題になります。
そして今一つ大切なのは生活習慣です。
つまり食習慣(塩辛い食,脂肪の多い肉食を好む,野菜ぎらい,ドカ食いなど)、運動の程度のほか、飲酒,喫煙の有無などです。 例えば、一日中座業につき運動量の少ないまま、食事だけは多く食べている習慣のヒトは、当然肥満体になり、高血圧症、高脂血症(高コレステロール血症,高トリグリセリド血症)、低HDL - C(善玉コレステロールが低い)血症を伴い、糖尿病に罹りやすく、動脈硬化性疾患(心筋梗塞,脳卒中)で斃れる危険性が高くなります。
また、喫煙の習慣は、動脈硬化の発生・進行を促すだけでなく、肺がんのほか狭心症,心筋梗塞、脳卒中の発症にも大きな影響をもつことが明らかにされています。 食事については、動物性脂肪を多く含む食事は大腸がんや乳がんに罹る危険性を大きくするのではないかといわれています。 肥満,高血圧,糖尿病(2型),脂質代謝異常(高コレステロール血症,高トリグリセリド血症,低HDL-C血症)は“死の四重奏”と呼ばれるほど、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)に深いかかわりをもっています。
上に述べました肥満,高血圧症,高脂血症,糖尿病,心筋梗塞,脳卒中などは代表的な生活習慣病で、食事の制限,適度な運動を習慣づけ、禁煙を守ることによって発病、ひいてはこれら疾患による死亡率を低下させることが明らかにされています。 がんについては遺伝のかかわりを取り除くことはできないにしても禁煙は肺がんの発生を少なくし、欧米型食事習慣の是正は大腸がんや乳がんにかかりやすい危険性を少なくするといわれています。