原発性アルドステロン症は、以前は低カリウム血症を伴う高血圧症の患者さんに多いものと考えられていたため、高血圧症の0.5%未満とかなり稀な疾患とされていました。しかし、現在では低カリウム血症などの典型的な症状を示す患者さんの方が少ないことが明らかとなり、血清カリウム値が正常な高血圧症患者さんについても調べたところ、高血圧症の5~15%にもおよぶ非常によくみられる疾患であることが解ってきました。
原発性アルドステロン症のスクリーニング検査は、普段は中等症~重症、あるいは難治性高血圧症の患者さんで行われることが多く、これまで軽症高血圧や正常高値血圧ではほとんど調べられていませんでした。しかし過去の論文では、低カリウム血症の患者さんについてその原因を調べた結果、極めて稀ですが正常血圧性の原発性アルドステロン症(Normotensive primary aldosteronism)と診断された患者さんが報告されています。さらに私たちは、これまで見逃されていたと思われる、血清カリウム値が正常で、なおかつ血圧も正常な無症候性の原発性アルドステロン症(Subclinical primary aldosteronism)の人がかなりの頻度で存在する可能性を下記の論文で報告しました1, 2)。しかし、その臨床経過や予後、治療法などについては未だ解らないことが多く残されているため、現在のところは副腎摘除術や抗アルドステロン薬内服などの治療を行わないで、無治療の状態のままで、将来的に高血圧症を発症するのかしないのかなど自然な経過を診てゆく必要があります。気になることがございましたら、お気軽にご相談下さい。
1) Yuji Ito, Ryoyu Takeda, Shigehiro Karashima, Yasuhiro Yamamoto, Takashi Yoneda and Yoshiyu Takeda. Prevalence of primary aldosteronism among prehypertensive and stage 1 hypertensive subjects. Hypertension Research 2011; 34: 98-102.
2) Yuji Ito, Ryoyu Takeda and Yoshiyu Takeda. Subclinical primary aldosteronism. Best Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolism 2012; 26: 485-495.