CARTとはCell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy(腹水濾過濃縮再静注療法)の略称になります。
癌性腹膜炎にみられる腹水貯留は、強い腹部膨満感だけではなく、食欲低下、下肢浮腫、呼吸苦などの症状をきたし、QOL(生活の質)を著しく損ない、抗がん剤などのこれまで続けてきた治療の継続が困難となる原因になります。
腹水貯留に対して利尿剤だけでは十分な効果が得られない場合は、腹水ドレナージ(穿刺による腹水排出)を行うこともありますが、その効果は一時的で、さらに腹水中に含まれているアルブミンなどの栄養分やグロブリンなどの免疫をつかさどる成分の消失によって全身状態が急激に悪化することが懸念されます。
CARTは腹水を可能な限り抜き取り、腹水中に存在する癌細胞、細菌を除去した上で、アルブミン、グロブリンなどの必要な成分だけを、体内にもどす治療です。癌を治す治療ではなく、あくまでも症状緩和を目的としています。もちろん効果および副作用については個人差がありますが、腹部膨満感の消失、食欲の改善により日常生活にもどられるかたや抗がん剤治療を再開できるかたもいます。
腹水の再貯留により、CARTを繰り返す場合もあります。経過中に癌の進行に伴って全身状態が悪化することもありますが、患者さんおよびご家族の症状緩和への希望が強い場合は、積極的にCARTを行っています。
当院では、要町病院腹水治療センター長の松崎圭祐先生によって考案されたKM-CART(改良型CART)を、研修をうけたスタッフにより2012年7月より導入しています。
腹水貯留による腹部膨満感等による症状緩和をご希望されるかたはお気軽にご相談ください。
※当院では肝硬変による難治性腹水に対しても同様にKM-CARTを行っております。
現在、他院で治療中であれば、主治医の同意および紹介状持参が望ましく、その上で、できるだけ早めに受診予約をとるようにしてください。紹介状が遅くなる場合、主治医に確認さえとれていれば、紹介状は後日でもかまいません。
入院当日もしくは外来初診時に諸々の検査(採血、CT等)を行います。検査結果によってはCARTの適応にならない場合があります。(高度貧血の場合は、事前に輸血が必要となります。)
費用については入院期間、病名、処置内容について多少変動はありますが、おおまかに3割負担7-9万、2割負担5-6万です。
初回患者のかたの夜間・休日の緊急CARTは原則おこなっていません。